未知
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昭和侠客传

7.0
昭和五年、やくざ桜一家は浅草に縄張りを持ち、関東一円に勇名をはせていた。或る夜桜一家三代目の千之助は、暴漢に刺されるという兇行に出会った。暴漢は桜一家に楯をつく愚連隊あがりの黒帯一家であることは明白だった。しかし、千之助は、やくざ稼業の因果さにいやけがさしていた。それだけに一人娘の良子だけは、堅気な男にと願っていた。しかし良子は桜一家の一の子分重宗に慕情を抱いていた。その頃黒帯一家は愚連隊青空一家を抱きこんでおとなしい桜一家に、ことごとく絡んでいた。そのたびに中に入ってかたをつける重宗の度胸に、魅せられた青空一家の勝男と譲次はぜひとも盃をと懇願した。重宗の行為に怒った千之助は、浅草においては、危いと憂慮する桜一家顧問の池上の言に、重宗は伊勢に身を寄せた。が黒帯一家の噂を耳にしてドス懐に浅草へ帰って来た。そのあとを、弟子にとしたう勝男がついていた。勝男は観音境内で今は妻梨江と屋台をひく譲次が黒帯一家に囲まれているのを救った。が、意趣返しに来た黒帯一家に囲まれ、重宗の居処を吐けとせまったが、勝男は最後まで口を割らず病院にかつぎこまれた。急を聞いてかけつけた重宗は、兄弟分の盃を与え、微笑をうかべて息絶える勝男をみとった。時を同じくして、桜一家の池上が、黒帯一家に刺殺された。千之助の怒りは爆発し殴りこみをかける決心をした。が一足早く、重宗は単身黒帯一家に殴りこみをかけた。襲いかかる白刃に血だるまになって進む重宗は、ついに深傷に膝を折った。応援にかけつけた千之助の心もむなしく、息をひきとった。重宗のなきがらにとりすがる良子の嗚咽を、「男になろう!男らしく死のう!」という男達の唱和が物悲しく包んだ。
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